さてさて、先に出た「くずし」について・・・。くずしのテクニックは、徒手空拳をある程度学んだ者であれば、その必要性も、その方法も理解されていると思います。まだ、僕が柔道小僧だったころ、一つ年上の女の子で、出足払いから体落としのくずしの上手な先輩がいました。受け側の左足を払う取り側の右足が、そのまま体落としの外側に出る足になります。このときの引き手のタイミングが絶妙で、出足払いを仕掛けられる瞬間に受け側の左足から右足に体重移動を誘うのです。頭では、理屈も方法も分かっているのに避けられず、何度も投げられて悔しい思いをしました。この経験から、僕は、正道館時代に二発の左下段回し蹴りから左前蹴りへのつなぎ技を得意としていました。三発目の左ローキックを右足で受けようとする相手は、中段がノーガードになる上、重心が左足一本に偏ります。つまり、前蹴りの衝撃をもろに腹部に受けることになります。下段回し蹴りの軌道で前蹴りを放って、僕のKO・技ありパターンとしてました。直美先輩のおかげで出来た「くずし」の誘いです。
話は変わって、ドラマの話。田村正和さんの「古畑任三郎」だったと思います。おもしろいシーンがあって、確か犯人が棋士って設定だったと思います。古畑刑事に犯人が、将棋で一番強い囲いは何かと問います。いや、問われたのかな?答えは、将棋を開始する時の状態、歩が前線にきれいに並んでいて、両サイドに角飛車がある、シンメトリーな囲いこそ、最強の囲い、つまり、将棋とは、勝たんが為、一つ一つこの強固な囲いを崩していくこと、という答えに古畑刑事が感心するシーンだったと思います。このシーンの絵柄もストーリーもほとんど覚えていませんが、勝つために堅牢な防御を崩さねばならない、と言うメッセージがとても共感できて印象に残ってます。間合いの外にいて、しっかり正眼で構えていれば、どんな相手の攻撃も怖くない、でも、こちらも攻撃できない。勝つこともなければ、負けることもない。無難に生き残る方法であります。では、勝つにはどうするか。攻撃は最大の防御と攻めまくれば、相打ちか、勝ったり負けたりになる。波瀾万丈に生きていく方法であります。生き方としてはどちらもありです。人それぞれのやり方、選択の問題です。
結果が勝にせよ、敗にせよ、恐れていては動けない。恐れは、自身の崩れか相手の攻撃か、いずれにせよ、恐れを抱いたままでは、勝機を呼び込むことはできません。勝ちたいリスクは、負けるかもしれないこと、負けないリスクは、勝てないこと、さて、あなたにとってはどっちのリスクが大きいでしょうか? 必ず勝つセオリーはありませんが必ず負ける動きはあります。勝敗に全神経を注いで知恵も絞って、勝つことだけに集中する。どきどきです。つまり、これがスポチャンの醍醐味。勝機は、相手と対峙し、どちらかがなにかを仕掛ける時におこる。つまり、自分も相手も、攻めようとする瞬間が一番崩れる。ここが狙い目、狙われ目、そして勝機の生まれ所です。その瞬間を待つんです。どきどきです。
「くずし」とは、相手の正中線をぶれさせること、相手を居着かせること、相手のかかりの「か」を攻めること。くずしを誘えることができれば、勝機を自在に自分のものにできるでしょう。
さてさて、上述は、すべて、我が武道の師から教えていただいた受け売りなんですが、うまく今吹衆に伝えられるかな~。まあ一緒に頑張ろうぜ!くずしの誘いの習得を・・・。